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あるところに、わかりやすさばかりを求める王さまがいました

王さまの口癖は、いつも同じ

「わからん」「もっとわかりやすくしてくれ」

 

他国との交流の書類に目を通して

「ややこしすぎる!もっと簡単に!」

 

国を挙げた会議の壇上で

「結局何が言いたいんだ!もっと正確に!」

 

たま〜に街に出る時は、こっそり小声で

「どこが入り口だ?わかりづらい!」

「値段が見えない、わかりにくい!」

「メニューが複雑、見えにくい!」

 

あれもこれもわかりづらいと

わかりやすさを重視する王さまです

国民は王さまの事が嫌いではありません

だから、何とかわかりやすいように手を尽くす

 

「見にくい文書はグラフにしましょう」

「専門用語は易しい言葉に変えましょう」

「結論は先に言いましょう」

「ロジックを積み上げて納得感が増すように」

「遠回りせずに伝えたい事まで一直線に」

「値段が見にくい、大きな文字に」

「入り口がわからん、扉を縁取り」

「メニューは一品ひとしな、目立つように」

 

あらゆる工夫を施して

全部ぜんぶわかりやすい

 

字は大きくて見やすいし

欲しい情報はすぐ取れる

王さまは言いました

「国じゅう全てわかりやすい」

「これこそ我が望んだ国!」

 

王さまは大喜び

わかりやすい国ができました

 

*****

ある日、わかりやすい国に青年がやってきた

彼は異国の王子さま

いずれ王になるために今はあちこち旅をして

経験と知識を積んでいる途中

でも王子は国にいることになっているから

ここにいるのは内緒だよ

 

彼が訪れた目的は

「わかりやすい国の人が何を食べるのか」

「どんなことを感じ暮らしているのか」

「歴史は?文化は?」を知ること

好奇心に目を輝かせ

わくわくで肩が上がっている

 

さて、市場にやってきた

ドキドキしながら喋ってみる

「これはどんな味がするんですか?」

聞かれた老婆はこう答える

「見ればわかるだろう」

 

王子さまは考える

(あれ?ちょっと機嫌が悪い?)

めげずにもう1度聞いてみる

「これって甘いんですか?」

「だから、見ればわかるだろう」

帰ってくるのは同じ答え

(よし、店を変えよう)

「すみません」と言って店を去る

 

今度はカフェに入って見た

「オススメメニューは何ですか?」

聞かれた美人はこう答える

「書いてあるじゃない?」

王子さまはメニューに目を落とす

確かに、オススメ!とメニューに書いてある

「これってどんな味なんですか?」

顔を上げて聞いた時

美人はすでに他の客の元へ

 

仕方なくメニューに書かれてある

オススメを頼むことに

「これを1つ」

「かしこまりました」

 

出てきた見たことのない食べ物

(僕の国にはないものだ)

(どうやって食べるんだ)

慌てて店員さんを呼び止める

「あの、僕この国に初めて来てこの食べ物初めて見ました」

「これってどうやって食べるんですか?」

店員さんはこう答える

「ここに書いてありますよ」

指差した先には掲示物

丁寧に食べ方が書いてあった

「ありがとうございます」

あったかくてちょっと辛い異国のご飯

おいしいなあ

 

*****

わかりやすさを重視した国

王様が望んだ理想の国

ところがどっこいこの国は

大切なものを失った

数十年後 人口が減り経済がしぼみ 作物が絶え

国は一気に衰退した

さてさてこの国が失ったもの

それは一体なんでしょう

 

他国の王子が望んだのは

異国について知ること

知るために必要なのは・・?

 

 

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