お久しぶりの、コラム記事です。

先日、頴娃町に移住して2か月を迎えました。

6月5日から南九州市での生活が始まったので、9月5日で丸っと90日が経ったことになります。

 

予約した日付は偶然で、特別にお祝いをするつもりではなかったけれど、移住記念2か月の夜に、彼と2人。

とあるお店でディナーをいただきました。

 

数年前から行ってみたいと思っていた。でも値段的な意味で、中々足を運ぶことができなかったお店です。

ではなぜこのタイミングでお店の予約フォームに飛んだかというと…、なんとなく。

 

お店自体が移転のため、年内に鹿児島からなくなってしまうというカウントダウンに背中を押されたことも大きいけれど、不思議と今のタイミングで心の底から行きたくなりました。

金額的な問題については、拠点を移してから少しずつお仕事が増えていて「今だったらなんとか行ける…!」と少しだけ不安が和らいでいた時期でした。

 

「そんなに二の足を踏むって、一体いくらなの?」と思われたかもしれないけれど、わたしの人生の中で(現在26才)一番高価なディナーとなりました。

あえて追加するならば、
「自分で働いて得たお金で食べた中で、一番高価な食事」

色んな人に助けてもらっているおかげで、どこからが自分で得たお金で、どこまでがあなたのお金かわからないけれど。

(みんなで回す、という意味では、わたしだけのお金ではない)

その時自分に回ってきたお金を、ステキな時間に変換させてもらいました。

 

ディナーという名前がついた、エンターテイメントな3時間。

これまでのわたしの人生になかった、新しい扉が開かれました。

 

まず、服装で悩む

予約をしたのは1週間前ぐらい。

最初は「サプライズで連れて行ったら喜ぶぞ」と彼には内緒にしていたけれど、あまりにも楽しみすぎて予約した2日後ぐらいにバラしました…。

 

金額で二の足を踏むくらいのお店なので、ドレスコードがあります。

行ってみた感想としては「きれいめのスニーカーだったら入れなくもなかったかも…」と思うけれど、これまでの人生で一番高いディナーですからね、それ相応の服を着ていきたいもの。

というわけで、普段滅多に着ないワンピースに袖を通し、これまた滅多に履かないヒールに足を入れ、またまた滅多に引かないアイラインまで。

彼は黒のパンツに青いジャケット。足元はもちろん革靴です。

「久しぶりに着てるの見たわ」
「普段からもっと着たらいいのに」
とお互いの見た目の感想を述べながら、車は鹿児島市へ。

 

 ドキドキしながら、お店へ

お店での食事はコース料理がメイン。

18;30から入店できて、19;00から一斉にコースがスタートという変わったお店。

「お客さんが店を選ぶように、店もお客さんを選ぶ」

 

そんな文言を前情報として仕入れていたから、店内へと続く階段を降りる時は、大緊張。

肩の力が溶けたのは最後の段に足が着きそうなぐらいで、カウンターの奥で作業をしているシェフと目が合い、会釈をもらった時。

「会釈ぐらい、お店だったら当然でしょ」と不思議に感じるかもしれないけれど、数年越しの願いを叶えた初めての来店。

しかもドレスコード有り。

その一瞬の会釈でなんだかお店に受け入れられた気がして、わたしの緊張は半分くらい緩和されました。

 

無事に、入店

初歩すぎるけれど、まずは入店完了。

続いての問題は、グラスの持ち方とカトラリーの使い方。

ナプキンの扱い方も不安だし、途中でお手洗いに行きたくなったらどうしよう…。

もう入店してしまったので、後には引けません。

 

車は彼のおかげで60分100円のところに停められたから、ドリンクは気持ちの向くままに。

「まあ下戸だから、ノンアルコールなんだけどね…」と油断していたら、口の広いグラスに注がれる葡萄ジュースの白。

「葡萄ジュースにも、赤と白があるんですね」という間抜けな感想と共に飲み込んだら…

「この葡萄ジュース、おいしすぎる…!」

 

8皿+ドルチェ。
島津斉彬公のお膝元で、とうとうコースが始まりました。

 

「すごい」と「おいしい」が連呼した夜

「すごい」と「おいしい」が自分の口から、ああも連続して出たのは一体いつぶりだったか。

いや食事の席であんなに漏れたのは、初めてだったような気がする。

 

もちろんわたしの語彙力の少なさによってもたらされた出来事なのだけど、それ以外の言葉は必要なかった気もしていて。

「ナンタラかんとかがナントカで。コレコレなっているからアレアレなんだね」というグルメレポートみたいな感想は、逆に失礼なような。

 

心からの「すごい」と「おいしい」
そして「楽しい」

たった3つの言葉だけで、十分味わえました。

 

心配していたカトラリーは大きな音を立てずに済んだし、お手洗いも行きやすい位置にあった。

ナプキンはお手洗いから帰ってきたら、クルクルっと優雅な丸を描いてテーブルの上に置いてあって

「イスの上に置いたのは間違いだったかな…」と肝を冷やしたけれど、葡萄ジュースに励まされました。

 

「いいお金の使い方だね」

お店に行ったことを話したら「いいお金の使い方をしたね」と言ってくれた友人がいました。

だよね。わたしもそう思う。

 

蓋を開けてみたら、鹿児島市で暮らしていた時の1か月分の家賃並みのディナーだったけれど、お金の使い方として、1mmも間違っていなかった。

26才の今のタイミングで、鹿児島のあの場所で食べた、現時点の人生で一番高価なディナー。しかも、好きな人と。

絶対忘れないだろう経験は、すごくすごく勉強になりました。

 

これまでは、高いお金を払って何かを食べに行くという行為や、それをステータスのように語る人を理解できなかったけれど、今は少しわかる。

「あそこで食事できた自分が、とても誇らしい」

そんな気高い気持ちにさせてくれる、ステキなお店でした。